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===亀も空を飛ぶ===

 大分前に見た映画で、心に残る良い映画だったので投稿しようと思いつつ、なかなか投稿できなかった。イラク戦争終結後、はじめて作られたイラク映画。

    監督:バフマン・ゴバディ

(ネタばれ)
 物語りの舞台は2003年春、イラク北部のクルディスタン地方の小さな村。
上映開始早々、丘の上におびただしいアンテナが乱立している風景が映し出される。画面がズームインされると、高さ数メートあるアンテナを子供たちが支えている。そのアンテナの角度を少しずつ変えさせ、受像機の画面の映り具合を調整している少年がいる。
この子が、サテライトと呼ばれている主役の少年である。貧しい子供たちのリーダーである。子供達はこのリーダーの元、アンテナを立てたり、地雷を掘り出して売却したりして生計を立てている。誤って地雷を踏んだり、撤去処理中に爆発したりして、手や足のない子供が多い。何故、アンテナを建てる商売がはやっているかと言うと、アメリカのイラク攻撃が近づく中、大人達が情報を手に入れようと躍起になっている為であるが、開戦の情報は分からない。

 この村に、目が不自由な赤ん坊を抱いた少女と、両手を失った兄がいる。
この少女にサテライトが好意を抱いていていて、何かと便宜を計ってあげている。実は、この少女の赤ん坊は、アメリカ軍がイラクに侵攻したときに、兵士に暴行されて妊娠し出来てしまった子供である。少女は、暴行された酷い記憶に魘され、赤ん坊を何度も殺そうとしたり、自殺しようとしたりする。ある時は、荒涼とした丘の上に置き去りにしたりした。又、兄の方は未来を予知する能力があるようで、サテライトがしきりに情勢が今後どうなるのかを聞き出す。実際にアメリカのイラク侵攻が近い事を予言する。

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 サテライトは、少女を家に送っていく途中の池に、赤い小さな魚がいることを知り、少女の為に潜って取ってあげる。ある日、別の少年が池に潜って遊んでいるときに、偶然、少女の赤ん坊が池の中で死んでいるのを発見し、少女の兄に知らせる。兄もそれを予知していて、泣きながら池のほうに必死に走っていく。また、少女も絶壁から飛び降りて自殺する。「空を飛ぶ」とはこの事のようだ。少女でありながら、険しいほど大人びた表情が印象的である。

 やがて、イラクにアメリカ軍が侵攻する。アメリカ軍が侵攻することで、この村が良くなるのかどうかは誰にも分からない。映画に出てくる子供達が、生活も貧しく、身体も不自由であったりするが、とても明るく、精一杯、一生懸命働いている姿が心に残った。

監督のデビュー作:「酔っ払った馬の時間」も機会があれば是非見てみたい。

バフマン・ゴバディのインタビュー記事は下記HP→『亀も空を飛ぶ』→「監督インタビューはこちらから」   オフィスサンマルサン
    
by mikannohanasakuok | 2005-12-26 19:55 | 映画・ドラマ・文化芸能